前田護郎文庫

　聖書学者の前田護郎（まえだ　ごろう、1915–1980）の旧蔵書で、新約聖書学、西洋古典学、宗教学、言語学を中心とした和書1,364冊、洋書4,641冊からなる。ソフロニウス・エウセビウス・ヒエロニムス（347頃–419/420）やアウレリウス・アウグスティヌス（354–430）の全集などの貴重古書を含む。
　前田護郎は1938年東京帝国大学文学部言語学科を卒業。同年からドイツに留学し、ベルリン、ハイデルベルク、マールブルクの各大学で西洋古典学、言語学、聖書学（特に新約聖書）を学び、マールブルク大学で博士学位を取得した。ボン大学、ジュネーブ大学、エール大学各講師を経て、1950年に帰国。同年、東京大学教養学部助教授、1961年教授となり、西洋古典学、新約聖書学を担当した。1976年定年退官し、名誉教授となった。この間、無教会主義キリスト者として鴎友学園で日曜聖書講座を開設し、のち同学園長に就任した。また、雑誌『聖書愛読』の主筆を務めた。日本における新約聖書学の基礎を築き、著書に『新約聖書概説』（1956）、『ことばと聖書』（1963）などがある。
　本文庫は1986年に遺族より譲り受けた。洋書の目録が『前田護郎文庫目録』（2冊、1995）として刊行されている。