神原文庫（神原甚造）

　香川大学初代学長の神原甚造（かんばら　じんぞう、1884–1954）の旧蔵書で、和漢書15,890冊、洋書670冊が収蔵されている。あらゆる分野の資料が収集されているが、特に江戸時代後期から明治中期にかけて、日本が西洋の文物を摂取して急速に近代化していった時期の洋学関係資料をはじめ、当時の文化や社会の動向を伝える資料が豊富である。稀覯書も多く、1492年に朝鮮で刊行された朝鮮人のための日本語教科書『伊路波』（いろは、弘治5年朝鮮版）や、井原西鶴（いはら　さいかく、1642–1693）の『嵐者無常物語』（あらしはむじょうものがたり）下巻は天下の孤本である。またフランソワ・ハルマ（1653–1722）の『蘭仏辞書』（第2版、1729）をもとにオランダ商館長ヘンドリック・ドゥーフ（1777–1835）が、吉雄権之介（よしお　ごんのすけ、1785–1831）など多くの通詞と協力して編纂した蘭和辞書『ドゥーフ・ハルマ』なども含まれる。明治初期の錦絵版画、錦絵新聞等ビジュアルな資料も豊富である。
　神原甚造は1908年に京都帝国大学法学部を卒業。司法官として京都、大阪、神戸、東京などで活躍したのち、1945年大審院部長に就任した。1950年に香川大学の初代学長となり、草創期の大学の確立に尽力した。
　本文庫の目録として『神原文庫分類目録』（1964）、『神原文庫分類目録（続）』（1994）が刊行されている。また、図書館ホームページで目録等が公開されている。