江戸時代の蘭学、英学を中心とした洋学関係の和漢書約3,000点、洋書約500点が収蔵されている。英文学者で早稲田大学図書館長を務めた岡村千曳(おかむら ちびき、1882–1964)と英語学者の勝俣銓吉郎(かつまた せんきちろう、1872–1959)の旧蔵書、江戸時代に蘭学・洋学者を輩出した大槻家、宇田川家、桂川家の各家に伝わる蔵書などから構成されている。1971年に文庫が創設され、現在も収集が続けられている。 大槻玄沢(おおつき げんたく、1757–1827)は、杉田玄白(すぎた げんぱく、1733–1817)や前野良沢(まえの りょうたく1723–1803)のもとで学んだのち、江戸詰めの仙台藩医となり、蘭方医学塾「芝蘭堂」(しらんどう)を開いた。のち、杉田玄白の指示により『重訂解体新書』(1798完成、1826刊行)を執筆。桂川家は代々徳川将軍家に蘭方医として仕えたが、特に『解体新書』(1774)の翻訳に参加した4代甫周(ほしゅう、1751–1809)と、『和蘭字彙』(1855–1858)を刊行した7代甫周(ほしゅう、1826–1881)が有名である。宇田川家では、宇田川玄随(うだがわ げんずい、1755–1797)がヨハネス・デ・ゴルテル(1689–1762)の著書を翻訳して日本で最初の西洋内科書『西説内科撰要』(1793–1810)を刊行。宇田川玄真(うだがわ げんしん、号:榛斎 しんさい、1769–1834)は、稲村三伯(いなむら さんぱく、1758–1811)による日本最初の蘭和辞典『ハルマ和解』(『江戸ハルマ』、1796)の編集に協力したほか、多くの著書・訳書を残した。 本文庫には各種の稿本や刊本の貴重書が収蔵されており、杉田玄白、前野良沢、大槻玄沢ら諸家の肖像画も含まれる。目録として『洋学文庫目録(稿)』(1971)、『桂川今泉文庫目録(洋学文庫目録(稿)追補)』(1992)が作成されている。
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