正宗敦夫文庫

　国文学者で歌人の正宗敦夫（まさむね　あつお、1881–1958）の旧蔵書の一部で、和歌関係を中心とした約70点400冊が収蔵されている。平安朝の第5勅撰和歌集である『金葉和歌集』をはじめ、貴重な写本類が多数含まれる。
　正宗敦夫は小説家の正宗白鳥（まさむね　はくちょう、1879–1962）の弟で、洋画家の正宗得三郎（まさむね　とくさぶろう、1883–1962）の兄である。岡山県に生まれ、高等小学校を卒業後、上京して医師・歌人の井上通泰（いのうえ　みちやす、1867–1941）に師事した。1909（明治42）年歌文珍書保存会を主宰し、1925（大正14）年から与謝野鉄幹（よさの　てっかん、本名：寛　ひろし）・晶子（あきこ）夫妻と共に『日本古典全集』を刊行した。同書は266冊刊行されたが、そのうち初期の71冊までは与謝野夫妻と共編で、残り195冊は正宗敦夫の独力で刊行された（『正宗敦夫の世界：階上階下すべて書にして』吉崎志保子著、1989年に詳しい）。晩年はノートルダム清心女子大学教授となり国文学を講じた。著書に『万葉集総索引』（1929–1931）、『金葉和歌集講義』（1968）などがある。
　本文庫の目録は『ノートルダム清心女子大学付属図書館所蔵特殊文庫目録』（1975）に収録されている。なお、正宗敦夫の旧蔵書は他に、備前市の自宅に「正宗文庫」として約2万冊が保管されている。また、その一部の目録が『正宗文庫所蔵典籍分類目録：郷土関係編』（1995）として刊行されている。