池田家文庫は、岡山藩主池田光政(いけだ みつまさ、1609–1682)が1632年に岡山城に入封して以来、1871(明治4)年の廃藩置県にいたるまで約240年間にわたる岡山藩政史料および池田家伝来の史料からなる。和書約22,000冊、漢籍約10,000冊、古文書・記録類約68,000点が収蔵されている。岡山藩は、備前国(現・岡山県東南部)一国と備中国(現・岡山県西部)の一部を合わせた32万石の領地を支配する全国屈指の大藩であった。池田家文庫には、この岡山藩の藩政史料がほぼ完全に保存されており、単に一藩の歴史に止まらず、日本の封建社会の研究に貴重な史料を提供するものである。 本文庫の和漢書は主に板本であるが、写本も少なくない。多くの貴重書が含まれ、特に著者太田牛一(おおた ぎゅういち、1527–没年不明)による自筆の『信長記』(15巻15冊)は重要文化財に指定されている。また、『平家物語』(20巻20冊、長門本)の写本が保存されている。そのほか、岡山藩の重臣で国文学者の土肥経平(とひ つねひら、1707–1782)旧蔵の「土肥秘函」(とひひかん)は、有職故実や国文学に関する貴重な写本を多数含んでいる。さらに岡山藩や岡山の郷土に関する史料も豊富である。古文書・記録類に関しては、織田信長(1534–1582)、豊臣秀吉(1537–1598)、徳川家康(1542–1616)などの書状をはじめ、池田家歴代藩主の書状や日記類、藩士および庶民の諸証文などを含む。記録の大部分は藩政上の記録であって、藩政諸般についての史料の宝庫といえる。絵図、地図の類も多数保存されている。 本文庫は1950年に池田宣政(いけだ のぶまさ、1904–1988)より岡山大学に譲渡された。古文書・記録類はマイクロフィルム化され、概要ならびに画像の一部が図書館ホームページで公開されている。目録として『岡山大学所蔵池田家文庫総目録』(1970)が、解説書として『岡山大学所蔵特殊文庫解説』(1982)が刊行されている。
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