東京帝国大学で西洋哲学を講じたラファエル・フォン・ケーベル(1848–1923)の旧蔵書1,999冊(洋書)からなる。ギリシア・ラテンの古典学を中心に、西洋哲学・文学関係の図書を多く含む。 ケーベルはドイツ系ロシア人として生まれ、モスクワの音楽学校を卒業したのち、ドイツに留学してイエナ、ハイデルベルク両大学で哲学と文学を学んだ。エドゥアルト・フォン・ハルトマン(1842–1906)の推薦で来日し、1893(明治26)年から1914(大正3)年まで22年間にわたり東京帝国大学の哲学講師として、西洋哲学、美学、ギリシア語、ラテン語、ドイツ文学等を講じた。また東京音楽学校でピアノの教授も行った。幅広い教養と清らかな人格により多くの学生に感化を与え、西田幾多郎(1870–1945)や井上円了(1858–1919)をはじめ多数の門下生を輩出。夏目漱石(1867–1916)は『ケーベル先生』などの作品を書いた。1914年にドイツへ帰ろうとしたが、第一次世界大戦が勃発したため帰国できず、そのまま日本に滞在して横浜で生涯を終えた。 ケーベルに師事し、のちにその随筆集『ケーベル博士随筆集』を翻訳した東北帝国大学法文学部哲学教授(当時)の久保勉(くぼ まさる、1883–1972)の斡旋で、1942年に蔵書を購入した。目録として『A Catalogue of the Koeber Collection』(1943)が作成されている。