阿川文庫（阿川重郎）

　阿川重郎（あがわ　じゅうろう、1870–1943）が収集した朝鮮の活字本、写本約5,000冊からなる。国王から臣下へ渡された下賜本125冊を含み、約500冊が貴重書に指定されている。哲学・文学に関する漢籍（朝鮮本）を含む。本文庫は日本における数少ない大型の朝鮮本コレクションとして、東京大学文学部言語学研究室所蔵の小倉進平文庫、天理大学図書館の今西龍文庫、東洋文庫、大阪府立中之島図書館と並ぶものである。
　阿川重郎は1897（明治30）年に東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業。1902年大韓帝国期の朝鮮に渡り、漢城（現・ソウル）で土木請負会社阿川組を創立した。朝鮮の主要な官公庁から受注を受け、鉄道建設を中心として幅広い企業活動を行った。1910年日本による朝鮮植民地化以降は、朝鮮総督府、南満州鉄道会社などの指定を受け、鉄道建設を中心に官営・半官営の土木工事を請け負った。
　本文庫は、1923年の関東大震災で図書館が壊滅したのちに、復興図書の一つとして購入された。文庫受け入れ時に筆写目録『阿川文庫目録』が作成されたが、その修正・増補版として吉田光男により「東京大学総合図書館所蔵阿川文庫リスト」が作成され、『朝鮮文化研究』（東京大学文学部朝鮮文化研究室研究紀要、5号、1998年）に収録されている。同誌には解説として「阿川文庫の成立とその性格」（吉田光男著）が掲載されている。