古貨幣コレクション（藤井栄三郎）

　実業家の藤井栄三郎（ふじい　えいざぶろう、1865–1949）が収集した東洋諸国の古貨幣約12,000個のコレクションである。日本、中国、朝鮮、安南（ベトナム）などにおける古代から近代にいたる貨幣が網羅的に収集されている。日本については708（和銅1）年に鋳造された和同開珎から明治の新貨幣まで集められている。日本銀行所蔵の古貨幣に次ぐ日本第2の大規模なコレクションである。
　藤井栄三郎は、強力消化剤「タカジアスターゼ」を創成した化学者の高峰譲吉（たかみね　じょうきち、1854–1922）の実弟にあたり、化学工場を経営する一方で古銭の収集に力を注ぎ、東洋貨幣協会副会長を務めた。本コレクションは、慶応義塾大学の滝本誠一（たきもと　せいいち、1857–1932）教授を経て、東京大学経済学部土屋喬雄（つちや　たかお、1896–1988）名誉教授（当時助教授）の紹介により、山崎覚次郎（やまざき　かくじろう、1868–1945）名誉教授（当時教授）を通じ、1927年に経済学部に寄贈された。
　なお、東京大学経済学部には、実業家の2代目安田善次郎（やすだ　ぜんじろう、1879–1936）から1923年に寄贈された総数約25,000枚に及ぶ古札のコレクションも収蔵されている。藩札308種、私札96種を含む。これらの画像の一部が東京大学経済学部図書館ホームページの「デジタル展示館」で公開されている。目録として『大学院経済学研究科所蔵古貨幣コレクション』（1999）が刊行されている。