幕末から明治期の博物学者田中芳男(たなか よしお、1838–1916)の旧蔵書で、本草、動植物学、農学、水産、林学関係の和書約6,000冊が収蔵されている。博物学および博覧会関係の貴重な集書であり、一次資料が丹念に収集・保存されている。この中には、1858(安政5)年から1916(大正5)年にかけて収集された様々なチラシ等の印刷物(商品の広告、料理屋の箸袋、催物のプログラム、招待状、その他)が張り込まれた『君拾帖』(くんしゅうちょう)などがある。 田中芳男は本草学者伊藤圭介(いとう けいすけ、1803–1901)のもとで学び、1861年江戸幕府の洋学研究教育機関であった蕃書調所(のち開成所)に出仕。1866年に幕府から命ぜられてパリ万国博覧会に自ら採集した昆虫標本を出品するため渡仏した。明治維新後は文部省博物局に配属され、ウィーン万国博覧会(1873)、フィラデルフィア万国博覧会(1876)に参加した。明治政府が殖産興業推進のため1877(明治10)年から5回にわたって開催した内国勧業博覧会では要職について会を推進した。東京上野の博物館や動物園の開設にも尽力した。植物学、水産学にも精通し、日本の農林水産業の発展に貢献した。 本文庫は田中芳男の孫の田中美津男より1931年に一括して寄贈された。『田中美津男男爵寄贈図書目録』(1936)が刊行されている。
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