青洲文庫（渡辺信）

　甲州の素封家の渡辺信（わたなべ　まこと、号：青洲せいしゅう、1840–1911）、その岳父・寿（1803–1875）、子・沢次郎（1870–1941）の3代にわたって収集された蔵書である。1923年の関東大震災で東京大学の図書館が潰滅したあと、青洲文庫の蔵書約10万冊のうち約3万冊が復興本の一つとして沢次郎より購入された（一部寄贈）。内容は漢籍、国文学関係書が中心である。
　渡辺家は山梨県市川大門町で代々紙問屋を営み、徳川幕府の御用商人であった。寿は国学を学び和歌に親しみ、歌文の和書を集めた。信は漢詩文に通じ漢籍を収集し、1887（明治20）年に屋敷内に個人図書館を建て、青洲文庫として一般に公開した。沢次郎は浮世草子、草双紙、洒落本など江戸時代の軟派物を集めた。
　目録として『青洲文庫古板書目』、『青洲文庫古板書目外目録』、『青洲文庫目録』、『渡辺沢次郎寄贈図書目録』が総合図書館参考調査掛に備え付けられている。