旧・紀州藩(紀伊藩/和歌山藩)藩主徳川家の蔵書である。1902(明治35)年に徳川頼倫(とくがわ よりみち、1872–1925)が、欧米式の図書館を参考にして東京麻布飯倉の自邸に南葵文庫を開いた。紀州を意味する「南紀」の「南」と、徳川家の家紋の「葵」の字をとって「南葵文庫」と命名したという。1908年からは藩の関係者だけではなく、一般にも公開された。 南葵文庫には、紀州(紀伊)徳川家所蔵の図書2万冊のほかに、諸氏の旧蔵本や寄託本が収められ、1920年には所蔵冊数は12万冊にものぼった。この中には、国学者の小中村清矩(こなかむら きよのり、号:陽春廬 やすむろ、1821–1895)、故実家の坂田諸遠(さかた もろとお、1810–1898)、横浜正金銀行ロンドン支店長の中井芳楠(なかい ほうなん、1853–1903)、幕末期の北方探検家松浦武四郎(まつうら たけしろう、1818–1888)、幕末・明治の政治家勝海舟(かつ かいしゅう、1823–1899)、漢学者・劇作家の依田学海(よだ がっかい、1833–1909)、国文学者の佐佐木弘綱(ささき ひろつな、1828–1891)などの旧蔵書が含まれている。 1923年の関東大震災で東京大学の図書館が潰滅したのを受けて、徳川頼倫より約10万冊(うち約5,000冊は洋書)が寄贈された。図書と同時に引き継がれた『南葵文庫目録』(1908)、『Catalogue of the Nanki Bunko』(1914)、『南葵文庫概要』がある。
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