トマス・ハーディ・コレクション

　イギリスの小説家、詩人のトマス・ハーディ（1840–1928）の著作および関連資料342点（洋書）のコレクションである。ハーディの著作の初版本、初出雑誌、改訂本、限定版、各種全集のほか、書名入り本、書簡、パンフレット、上演プログラム、肖像画などが収蔵されている。イギリスのハーディ研究者ジェイムス・ギブソン（1919–）博士が約30年かけて収集した資料を1986年に購入したものである。
　ハーディはイギリスのドーセット州ハイヤー・ボカムトンに生まれた。建築家として働くかたわら、詩作に傾倒するが、詩集の出版を実現することができず、小説に転向。1871年に処女作『窮余の策』が出版され、1874年発表の『遥か群衆を離れて』で大きな成功を収めた。その後、『帰郷』（1878）、『カスターブリッジの市長』（1886）、『ダーバヴィル家のテス』（1891）、『日陰者ジュード』（1896）などを発表。主要な作品はいずれも悲劇で、その悲観的傾向は作品を追うごとに濃厚となった。また作品の中で既存の道徳･宗教に鋭い批判を加えたため、保守的な読者からの抗議が相次ぎ、『日陰者ジュード』以後、長編小説の執筆を断念した。その後は詩作に転じ、数多くの詩集や叙事詩劇『ダイナスト』（全3部、1903–1908）を発表し、詩人としても高い評価を受けた。
　本文庫の目録として『トマス・ハーディ　その作品の変遷：中央大学図書館ハーディ・コレクション解題目録』（1988）が刊行されている。