マン文庫（フリッツ・カール・マン）

　ドイツの経済学者フリッツ・カール・マン（1883–1979）の全蔵書で、マンの著作を含む洋書約5,000冊と多数の論文抜刷が収蔵されている。経済学書に関しては、ほとんどすべての学派に関する中心的な学者の主著が含まれており、経済思想史の流れが俯瞰できる構成となっている。そのほか、ジョン・ロー（1671–1729）やシャルル・ルイ・ド・スコンダ・モンテスキュー（1689–1755）の著作、イマヌエル・カント（1724–1804）をはじめとした哲学者の著書が多く含まれている。
　マンはベルリンに生まれ、フライブルク、ミュンヘン、ベルリンの各大学で法律を学び、1904年に司法官試補の試験に合格した。1906年にゲッティンゲン大学で法学博士の学位を取得。さらに1903年にベルリン大学で哲学博士の学位を取得した。ロンドンとパリで研究生活に従事し、1914年にキール大学で国民経済学に関する教授資格を取得した。第一次世界大戦では従軍して1914年から1918年までルーマニアに滞在したが、その間も研究を続け、『ルーマニアの戦時経済』を執筆した。1919年キール大学世界経済研究所教授、1922年ケーニヒスベルク大学の国民経済学教授、1926年ケルン大学財政学教授を歴任した。1933年ナチスにより講座廃止や焚書の迫害を受け、1936年米国に移住。1936年から1956年までアメリカン大学教授として経済学を講じた。最後の著書『財政経済の意義』を94歳で出版し、翌年95歳でこの世を去った。
　文庫は1982年に購入され、目録として『マン文庫目録』（1993）が刊行されている。