在一居士文庫（高橋五郎）

　元・国立国語研究所庶務部長の宮沢武司（みやざわ　たけし、–1992）が収集した、高橋五郎（たかはし　ごろう、本名：吾良、号：在一居士　ざいいつこじ、1856–1935）の著作物のコレクションである。明治初期の各国語の字典・辞典、翻訳、語学関係書、評論、宗教研究史関係書、心霊学研究書などの図書270冊、雑誌12冊からなる。
　高橋五郎は明治から昭和初期の英語学者、評論家、翻訳家で、サミュエル・ロビンズ・ブラウン（1810–1880）に師事し、その『新約聖書』の邦訳に関わった。1880年に『神道新論』、『仏道新論』を刊行。キリスト教系の雑誌『六合雑誌』（りくごうざっし）などに論文を寄稿し、評論家としても活躍した。著書、翻訳書を多数執筆した。
　宮沢武司は国民英学会で高橋五郎の指導を受け、文部省勤務のかたわら、高橋五郎に関する資料を収集した。昭和女子大学発行の『近代文学研究叢書』第39巻で高橋五郎を取り上げたのが機縁となり、資料が昭和女子大学に寄贈された。高橋五郎は、昭和女子大学の前身である日本女子高等学院で、数年英文学を教えたという縁も重なる。なお、文庫名「在一居士文庫」は宮沢の命名による。