ウィリアム・モリス　コレクション

　19世紀の英国ヴィクトリア朝時代に、詩人、工芸家、デザイナー、社会思想家として多彩な活動を展開したウィリアム・モリス（1834–1896）の著作物と関連資料500点余（洋書）のコレクションである。この中には、『チョーサー著作集』（1896）をはじめとするケルムスコット・プレス刊本全53点66冊が含まれる。
　ウィリアム・モリスはオックスフォード大学で神学を学んだのち、建築家を志すが、やがて絵画に興味を持ち、画家となった。のち工芸家に転じた。1861年知人らとモリス･マーシャル･フォークナー商会を設立（1875年単独のモリス商会を発足）し、室内装飾を手がけた。彼は産業革命による大量生産で氾濫する粗悪品を嫌悪し、中世における手仕事と共同作業を範とした労働および工芸品の質の向上を主張した。こうした考えは1880年代になるとアーツ･アンド･クラフツ運動として発展し、アール・ヌーボー（ドイツ語：ユーゲントシュティール）などの近代デザインの源泉となった。やがて政治活動にも力を注ぎ、1883年社会民主同盟に参加し、1884年新たに社会主義者連盟を組織した。晩年の1890年には私家版印刷工房ケルムスコット・プレスを創設し、独自にデザインした装飾的な書体を用いた優れた書物を刊行した。
　本文庫の展示会目録として『ヴィクトリア朝挿絵本とウィリアム・モリス：大阪芸術大学図書館所蔵品特別展』（1996）、『ウィリアム・モリスとケルムスコット・プレス刊本：大阪芸術大学図書館所蔵品展』（1999）が刊行されている。