医学者で日本の医史学の確立者、富士川游(ふじかわ ゆう、1865–1940)の旧蔵書で、和漢の古医書3,632冊が収蔵されている。富士川が慶応義塾大学で講師を務めた縁で遺族から寄贈された。京都大学附属図書館所蔵の「富士川文庫」と合わせることによって富士川の旧蔵書の全貌をつかむことができる。 富士川游は安芸国(現・広島県西部)に生まれ、1887年広島医学校を卒業。上京して医学雑誌『中外医事新報』の編集主任となった。1898年から2年間ドイツに留学し、イエナ大学で神経病学および理学療法を研究。帰国後、東京日本橋の中州養生院内科医長に就任した。この間1890年頃より医学史の研究を始め、苦心して和漢の古医書を収集。1904年に日本の医学史の本格的研究『日本医学史』を完成した。この功績により1912年帝国学士院恩賜賞を受賞。次いで『日本疾病史』(1912)により、京都帝国大学で医学博士の学位を取得した。1927年には日本医史学会を設立し、のち理事長に就任。また京都大学、九州大学、東北大学などで講師を務め、慶応義塾大学では1918年から1940年まで20年以上にわたって医学部で医史学を講じた。宗教、児童問題についても学識が深く、業績は『富士川游著作集』(全10巻)にまとめられている。 本文庫の目録は『古医書目録』(改訂版、慶応義塾大学医学メディアセンター編、1994)に収録されている。
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