第五高等学校(熊本大学の前身)の1909年卒業生で、熊本大学講師を務めた柚原益樹(ゆのはら ますき)の旧蔵書で、中国哲学関係の漢籍類2,943点が収蔵されている。道家(どうか)、道教関係の『正統道蔵』、『道蔵輯要』、『道書全集』などが含まれている。 道家は、中国の戦国時代(前5–前3世紀)に発生した諸子百家の一つで、老子(ろうし)が創始し、荘子(そうし)が集大成したといわれている。無為自然、無欲などの虚無の道を説き、『老子』、『荘子』などの書物が伝えられている。漢の武帝(ぶてい、前156–前87)によって儒教が国教化されると、諸子百家の思想は次第に衰えたが、道家思想だけは生き残り、知識人に影響を与え続けた。後漢(25–220)の後半期になると、道家思想に神仙思想などが加わり、不老不死を願う宗教としての道教が形成された。道教は『老子』、『荘子』などを経典とするが、古代の道家思想とは区別される。 道蔵とは、中国で道教の経典(道書)を集成したものをいい、仏教の大蔵経に相当する。唐代以来、道蔵は数次にわたり刊行されているが、現行の道蔵は、明代の『正統道蔵』(1444)と、その続刊の『万暦続蔵』(1607)を合わせたものである。その後は新たな道蔵編纂は行われなかったため、現行の道蔵には、明末以降の道書は含まれていない。これを補うものとして明末に新たな道書を収録した『道蔵輯要』が成都で刊行された。 本文庫の目録として『柚原文庫漢籍分類目録』が作成されている。
〒860-8555 熊本県熊本市黒髪2-40-1 Tel.: 096-342-2213 Fax: 096-342-2210 http://www.lib.kumamoto-u.ac.jp