医学者で日本の医史学を確立した富士川游(ふじかわ ゆう、1865–1940)の旧蔵書9,017冊からなる。内容は、平安時代から明治初年にいたる和漢の医書と、江戸中期以降の西洋医学書の翻訳書から構成されており、内科、外科、産科、小児科、薬学等、医学のあらゆる分野が網羅されている。これらは、富士川の主著『日本医学史』(1904)を執筆するために収集された資料である。 富士川游は安芸国(現・広島県西部)に生まれ、1887年広島医学校を卒業。上京して医学雑誌『中外医事新報』の編集主任となった。1898年から2年間ドイツに留学し、イエナ大学で神経病学と理学療法を研究。帰国後、東京日本橋の中州養生院内科医長に就任した。この間1890年頃より医学史の研究を始め、苦心して和漢の古医書を収集。1904年に日本の医学史の本格的研究『日本医学史』を完成した。この功績により、1912年帝国学士院恩賜賞を受賞。次いで『日本疾病史』(1912)により、京都帝国大学で医学博士の学位を取得した。1927年には日本医史学会を設立し、のち理事長に就任した。また1909年に京都帝国大学で嘱託として医学史の講義をしたのをはじめ、慶応義塾大学、九州大学、東北大学などで教壇に立った。宗教、児童問題についても学識が深かった。『富士川游著作集』(全10巻)が刊行されている。 本文庫は1920年以降3回に分けて寄贈された。目録として『京都帝国大学富士川本目録』(1942)が刊行されており、図書館ホームページに目録と一部画像が公開されている。なお、富士川游の旧蔵書は、京都大学のほか、慶応大学医学メディアセンターに約3,600冊が所蔵されている。
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