実業家の谷村一太郎(たにむら いちたろう、号:秋邨 しゅうそん、1871–1936)が収集した和漢の古写本、古刊本9,200冊からなる。ほとんどが稀覯書で占められ、光明皇后(こうみょうこうごう、701–760)の願経などをはじめとした古写経、五山版などが豊富に含まれている。国文学関係も多く、特に仙台藩主の伊達(だて)家に仕えた猪苗代(いなわしろ)家伝来の連歌書類は異色の収書として知られている。 谷村一太郎は富山県の素封家に生まれ、慶応義塾大学から東京専門学校(現・早稲田大学)に転じ、同校を卒業。帰郷後、中越鉄道支配人、泉州貿易会社支配人を経て、1906年藤本ビルブローカ証券会社に入社した。同社取締役を務めたのち、1925年藤本ビルブローカ銀行会長に就任した。こうした実業界での活躍のかたわら、和漢の古典籍の収集に努め、珍籍稀書の入手のために大金を投じて悔いることがなかったと伝えられている。 本文庫は1942年に寄贈され、『京都大学谷村文庫目録』(1963)が刊行されている。また図書館ホームページに目録と一部画像が公開されている。
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